長いので、お時間がある時にお読みください。

19から23歳までが一度目、28歳の時に二度目の上京。それから現在まで、東京に8年間住んでいます。

これは僕が長野から東京への二度目の引っ越しを控えた前日の夜に起きた不思議な話です。

夕方までかかって荷物は全てまとめ、家族との夕食も済ませ二階に上がりました。
物がなくなってさっぱりしてしまった自分の部屋に布団を敷いて寝転んでいました。
二階には二部屋あり、僕の部屋の隣に兄の部屋が並んでいます。

僕は上京前夜のせいかどこかずっと心が忙しなく「きっとこれは寝つけないだろうなぁ」なんてぼんやり考えながら、お世話になった方や友人にメールや電話をしながら引っ越す旨を伝えたり挨拶をしていました。

そうしているうちに時間は意外と進んでいて
0時を回ろうかとしていました。
そろそろ寝なきゃって思いましたが仰向けになって天井を見つめていると、やはり一人暮らしの期待や夢などが膨らんでしまい更に目が冴えてしまいました。

あの不思議な出来事はそんな風に目が冴えて色んな思いにふけっている時に起こったのです。

ふと急に耳の奥でテレビの砂嵐の時のような
ザザザーーっという音が聴こえてきたかと思うとそれはすごいスピードでボリュームが大きくなり、イヤホンを大音量で聴いているよりもさらにもっと大きな音です。
あまりの突然の激しい耳鳴りに驚きましたが、いきなりピタッと音が止んだのです。

急に音がなくなったせいか、まるで時間でも止まっているんじゃないかと思うほど辺りはとんでもなく静かでした。

あまりの急な出来事に茫然としていると、ふと喉の乾きに気づき水を飲みにいこうと身体を起こそうとした時に気づいてしまったんです。
身体がまったく動かない。
目も天井だけを見つめたまま眼球すら動かせません。
仰向けのまま、完全な金縛りになってしまったのです。
身体も動かず目も閉じれられず、
ただただ天井を見続けているだけでした。

すると少し間をおいて天井から何かがゆっくりと垂れてきました。
すぐに両足の指だとわかりました。
部屋の照明はついたままでしたが、
それは爪などがない灰色の指でした。
『う、うわぁー!!、、、』
声をあげようとしましたが、ここで声も出せない事に気づいたのです。
そうして意識の中でもがいている最中、くるぶし、スネ、膝という具合にその天井から人間らしき物体が徐々に徐々に生えてくるのです。

もも、股、確実に人と同じ形をしています。
裸なのですが生殖器などはあまりません。

腹、胸、徐々に見えてきます。

首、そして顎、あと少しで全身が見えてしまうのです。

その時、このまったくわけのわからない人間めいたものと目があった時の事を嫌でも想像してしまい恐怖で気が遠のきそうでした。

そして、口、、、ん?
口が、ない?
鼻も、ない?
そしてついに全身。

僕の顔の上に人らしき物体が宙に浮いたまま。ずっと直立不動で前を向いている状態なので、角度のせいか顔がはっきりしません。
ただ僕が全身を確認したと同時に、すごい速度でぐいっと首が折れて顔が見えたのです。

その物体が僕を見下ろすような形になった時、僕の恐怖はピークへと達しました。

鼻も口もなく、あれが目というものなのかわかりませんが普通の人間の両目の位置が不自然に窪み、ちょうどペットボトルの蓋ぐらいの大きさと丸さの黒い底の見えない二つの穴が開いてるだけでした。
そして、その物体はその黒い穴で僕を見下ろしながら顔の上を中心にまわりはじめました。

僕の顔を見つめたままゆっくりと円を描くように。

すると次の瞬間、今度は腰を折って顔をぐぐっと覗き込んできたのです。
あまりの恐怖に無意識で悲鳴をあげたかったんだと思います。
僕の口からわずかにかすれた声にならない声が漏れたのです。
すると同時に金縛りが一瞬で解け、
ようやく大きな悲鳴が出ました。

悲鳴が出た瞬間にその物体はすっと消えてしまいましたが、消えた事を確認した次の瞬間、隣の兄の部屋からも悲鳴が聞こえてきたのです。

そして、兄の部屋のドアが勢いよく開く音がしたかと思うと、隣の僕の部屋のドアも勢いよく開きました。

兄が息切れしながら汗でびっしょりになった顔で僕に言った一言は

「お前も見たのか?」でした。

慌てて話を聞くと、あの時、僕の悲鳴で兄も金縛りが解け、その瞬間に兄も悲鳴をあげたのだと。

同時に僕と兄は違う部屋で同じ体験をしていたのです。

今になっても兄とこの体験の話をしますが、あの不思議な出来事がなんだったのかはわかりません。

さてさて、長文、失礼しました。
涼しくなりましたか?

それでは不思議な話は、またの機会に。